江戸川乱歩の美女シリーズ
江戸川乱歩「悪魔の紋章」より 死刑台の美女
死刑台の美女
制作松竹 テレビ朝日
放送局テレビ朝日系列「土曜ワイド劇場」
放送日1978年4月8日(土) 21:00-22:24

■スタッフ

製作担当/植野晃弘(テレビ朝日)
プロデューサー/佐々木 孟
原作/江戸川 乱歩 「悪魔の紋章」より
脚本/宮川一郎 井上梅次
音楽/鏑木 創 撮影/加藤正幸
美術/猪俣邦弘 録音/山本忠彦 照明/石渡健蔵 編集/寺田昭光
助監督/川上裕通 装置/森 篤信 装飾/印南 昇 記録/福島マリ 進行/副田 稔
美粧/ビアンコ調音/松竹映像録音スタジオ 衣装/松竹衣装 現像/東洋現像所 製作主任/石和 薫
協力/ヨコハマ双葉家具 衣装協力/キングシープ紳士服
監督/井上梅次

■キャスト

明智小五郎(私立探偵)/天知 茂

宗方京子(宗方隆一郎の妻)/松原智恵子

北園竜子(川手庄太郎の異母妹)/稲垣美穂子

文代(明智の助手)/五十嵐めぐみ

川手民子(川手庄太郎の長女)/かたせ梨乃

川手庄太郎(大富豪)/増田順司
田村刑事/宮口二郎

川手雪子(川手庄太郎の三女)/結城マミ
川手ハル子(川手庄太郎の次女)/三崎奈美
須藤(北園竜子の愛人)/加地健太郎
木島(宗方博士の助手)/東村元行(東村晃幸)

川手家の使用人/小田草之介
パトカーの警官/喜田晋平
岡本(川手家の家政婦)/村上記代
さと子(北園家の家政婦)/紺あき子
和尚の妻/谷よしの

パトカーの警官/土屋靖雄
和尚/青沼三郎
鑑識課長/山本幸栄
刑事/羽生昭彦
警官/沖 秀一

/岡本忠幸
温水プールの職員/篠原靖夫
トラックの運転手/加藤真琴
劇中劇の川手庄兵衛(劇団の男優)/山本伸二
/山中 明

/中村正人
劇中劇の山本(劇団の男優)/下坂泰男(下坂亮介)
劇中劇の山本満代(劇団の女優)/小野塚千枝子
劇中劇の老婆(劇団の女優)/藤原美佐穂
劇中劇の山本始(劇団の子役)/新垣嘉啓

波越警部/荒井 注

宗方隆一郎(医学博士、私立探偵)/伊吹吾郎

■ストーリー

明智小五郎(天知茂)は犯罪学者の宗方博士(伊吹吾郎)から、妻の京子(松原智恵子)が手術をするので香港で開かれる世界犯罪学会に代理で出席して欲しいと依頼される。
明智が出張している最中に、大富豪川手庄太郎(増田順司)の一家が殺人予告を受ける。三女の雪子(結城マミ)、次女の春子(三崎奈美)が相次いで殺害され、その体には三重渦状の指紋が残されていた。更に長女の民子(かたせ梨乃)と川手自身の身にも魔の手が伸びる…。

■美女ファイル No.3

松原智恵子
松原智恵子
宗方京子役。1945年生まれ(当時33歳)。岐阜県出身。
1960年、高校生の時にミス16歳コンテストに入賞したのがきっかけでデビュー。吉永小百合、和泉雅子と並び日活の青春スターとして絶大な人気を得る。 主な出演作に「学園広場」(1963年)「東京流れ者」(1966年)「戦争と人間」(1970年)など。
1971年に日活を離れ、その後は主にテレビドラマで活躍。

■管理人の感想

幼少期に見ていた「美しい女(ひと)」の印象と言うのは、いつまでも経っても色褪せないものです。 松原智恵子さんと言えば、私にとってはNHK大河ドラマ「国盗り物語」(1973年)のお市の方。清楚にして可憐、儚くも美しく散っていった、戦国に咲いた一輪の花…。松原さんのお市は、本当に素晴らしかったです。子供心にも、世の中にはこんなに綺麗な人がいるものなのかと思いました。
その松原さんが今回の「美女」として登場しています。 冒頭では、いきなり天知茂先生扮する明智小五郎が、松原さん演じる宗方夫人・京子をひと目見ただけで惹かれてしまいます。 って、オイオイ、相手は人妻(一応)だぞ・・・とツッコミ入れたくなる場面ですが、あのバンビのように潤んだ松原さんの瞳で見つめられたら一発で魅入られてしまう明智の気持ちはよくわかります^^;
物語は、その宗方夫人の依頼で明智が香港に出掛けている最中に、恐るべき殺人計画が進行してしまいます。 ちなみに原作では、宗方夫人は最後にちょろっと出るだけだし、明智も終盤になってから漸く登場します。 ついでに言えば、川手庄太郎の異母妹・北園竜子(稲垣美穂子)も原作では終盤ちょっと出てきてすぐ殺されてしまうだけの可哀想な役回りですが、ドラマでは序盤から登場して財産争いに一役買っています。シリーズの1作目と2作目では、概ね原作通りにドラマ化されて来ましたが、3作目の本作では、物語そのものは原作ベースで進みながらも、部分的にはテレビ向けの見せ場を作るために幾つかを手を加えています。
まず、タイトルを聞いた時点で「ハテ(・_・?)原作に死刑台なんて出て来たかな?」と記憶があやふやになります。そうです、死刑台云々なんて話は原作にはありません。このシーンはエドガー・ポオの小説「陥穽と振り子」からの流用であると同時に、乱歩自身がその着想を借用した通俗長編「大暗室」の中のワンシーンをアレンジしたものでしょう。川手民子役のかたせ梨乃ばかりか、文代さんの五十嵐めぐみまで下着姿で死刑台にかけられてしまうサービスシーンもあります。
それはともかく、物語は両親の復讐のため富豪一家が皆殺しの予告を受けると言う、「浴室の美女」と同じようなプロットで始まります。しかものっけから立て続けに二人が全裸で殺されてしまうのですが、当然、この役は脱ぎ要員のポルノ女優さん。 1作目と2作目は単に主演女優のヌードシーンが代役で吹き替えられるだけでしたが、この作品以降はそれと別個に脱ぎ要員の女優さんも存在している体制が確立します。 しかも普通は1人なのですが今回は初回特典?なのか2人も登場する大サービス。中でも春子役の三崎奈美は、あまりにも舌ったらずな台詞回しの稚拙な演技に笑ってしまうのですが、そこは体を張った演技に免じて問わないことにしましょう。
この二人の殺人と言い、後の死刑台シーンと言い、1作目2作目と比べてもエログロ度が増してきているところに特徴があります。
しかもこの間、我らが明智先生は出張中で不在と言う、やきもきさせられる展開です。
明智に代わってお馴染み波越警部(荒井注)とともに捜査に当たるのは、犯罪研究の大家・宗方博士。 ただイマイチ役立たずで、犯人の後手後手を踏んでしまいます。 やがて明智も帰国して捜査に加わりますが、宗方博士の巻き添えを食ってしまったかのように、犯人に出し抜かれます。名探偵が二人も揃っていて、どうしたことでしょう…って、それは勿論理由があるんですけどね。 しかし最後にはまんまと犯人を罠に嵌めて面目躍如。 お馴染み、明智の変装シーンもありますが、後にステレオタイプ化されたような「変装ベリベリ」とは違って、ごく自然なものになっています。 散る花の運命の如く哀しい犯人の最期はシリーズ屈指の名場面でしょう。
なお本作品から、後にお馴染みとなる「A」(明智探偵事務所)のイニシャル入りの、オリジナル・ブレザーが初登場しています。

宗方博士を演じた伊吹吾郎さんは、明智先生と張り合うライバルとしての貫禄は十分。当時まだ32歳(松原さんより年下!)だったとは思えません。この貫禄が認められたのか、後に「妖精の美女」では角刈りの黄金仮面となって再び明智と渡り合っています。
当時20歳のかたせ梨乃さんはCMモデルから女優に転身して1年目でした。公式のデビュー作はレギュラー出演した「大江戸捜査網」の第231話(東京12チャンネル、1978年4月15日放送)ですが、オンエアされたのは「死刑台の美女」のほうが1週間早いです。










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