日本一の古美術品コレクターとして知られる石油王の大島喜三郎(松下達夫)に怪盗・黄金仮面から警告状が届く。フランス商社の支社長ロベール・サトー(伊吹吾郎)とフランス大使館員ジョルジュ・ポワン(ジェリー伊藤)が大島邸を訪れる当日、大島家の古美術品を頂くと言う盗難予告状だった。
大島家の執事三好(藤村有弘)は波越警部(荒井注)の紹介で明智小五郎(天知茂)に警護を依頼する。名探偵と怪盗との対決が始まった…!!
由美かおる
大島不二子役。1950年生まれ(当時28歳)。京都府出身。
1962年、西野バレエ団に入団。1966年、「11PM」に出演し抜群のプロポーションで人気を集め、1973年の映画「同棲時代-今日子と次郎-」では初ヌードを披露。「アース渦巻」のホーロー看板でも有名。
1986年から2010年までTBSの時代劇「水戸黄門」に「かげろうお銀」「疾風のお娟」役で出演。
1978年の年末に当時まだ1時間半だった放送時間枠を2時間に拡大して放送されたスペシャル版です。この年は1年間で5作の新作が放送されたばかりかこの1週間後の年明け6日には早くも第7作
「宝石の美女」が放送されると言う、往年のプログラムピクチャー並みの多作振りでした。シリーズの人気の高さがうかがわれます。
ちなみに本作品とその続編である
「黄金仮面II 桜の国の美女」(第11作)だけは、90年代前半に松竹から単独でVHSビデオ化されていました。シリーズの再放送が絶えて久しかった頃でも、かろうじてこの2編のみは観ることができたわけです。
そういう点でもこの2編はシリーズの異色作。
タイトルからも明らかなように、メインは明智と黄金仮面の対決であって美女は副次的な意味合いしかありません。ややもすれば子供向けになってしまいそうな作品だけに、放送当時、「『黄金仮面』なんてドラマにできんの?」と不安になったことを覚えています。
物語は冒頭、いきなり明智小五郎がカメラ目線で視聴者をその三白眼で睨み付け、「皆さんはもう、“黄金仮面”のことはよくご存知だと思いますが…」と語りかけるところから始まり、最初から明智と黄金仮面の対決ムードを煽ります。
予告状に端を発して、大島家での盗難、お手伝い小雪(野平ゆき)の三女殺し、動く鎧武者、モーターボートでの逃走…と生真面目に原作をなぞった展開。
特に、逃げ場を失って鎧武者の中に隠れていた賊が動き出すシーンまで忠実に再現してくれるとは思いませんでした。小説を読んでいるときは何とも思いませんでしたがこうして映像化されたものを観るとかなり馬鹿馬鹿しくて、観ているこっちが気恥かしくなります。
しかしその程度で恥かしがっていたらこの作品は最後まで観られません。
一番恥かしいのは、黄金仮面の衣装をまとった時の天知茂先生の黒タイツ姿…じゃなくて^^;やはりロベールこと伊吹吾郎の"角刈りフランス人"でしょう。確かに伊吹さんは彫りの深い顔立ちとは言え、どー見ても日本人なのにフランス人に仕立て上げてしまう強引さ。
ついでに言うと、同じくフランス人を演じたジェリー伊藤・山本リンダのご両人とも片親がアメリカ人のハーフ日本人です。ちょっとガイジンぽければ日本人でもアメリカ人でもフランス人でも何でもいいと言ういい加減さが笑えます。
さてお話は、黄金仮面と不二子(由美かおる)の恋と言う原作の設定をこれもきちんと折込み、最後は手に手をとって国外へ逃亡。ロープウエイから縄梯子でヘリコプターに脱出する展開はドラマのオリジナルですが、実はこのアイデア、かつて井上梅次監督が撮った映画「黒の切り札」(1964年、大映、田宮二郎主演)からの使いまわしです(脚本家も同じ人)。最後は2人の生死不明として、再度明智との対決もあるかのように示唆して終わっていますが、、、まさか本当に続編が作られるとは思いませんでした。
由美さんと伊吹さんが後に「水戸黄門」のお銀と格さんになろうとは、この時点では誰も想像できなかったことでしょう。現在でも娘役一筋の由美姐さんですが、本当に若かったこの当時はさすがにまだピチピチして健康的なお色気を発散しています。欲を言えばあんまり肌の露出がなかったことか。由美さんと言えば「水戸黄門」の入浴シーンが有名ですが、残念ながらこの作品では入浴シーンがなく、ちらっとシャワーシーンがあるだけでした。
なお今回のEDであの有名テーマ曲が初めて登場しています。また、小林少年役として柏原貴さんがレギュラー入りし、以後4年間(14作)に渉って天知&荒井&五十嵐&柏原の不動レギュラーが続きます。