江戸川乱歩の美女シリーズ
江戸川乱歩「緑衣の鬼」より 白い人魚の美女
白い人魚の美女
制作テレビ朝日、松竹
放送局テレビ朝日系列「土曜ワイド劇場」
放送日1978年7月8日(土) 21:00-22:24
監督井上梅次
脚本長谷川公之
音楽鏑木 創

■キャスト

明智小五郎(私立探偵)/天知 茂

笹本芳枝(夏目菊太郎の姪)/夏 純子

文代(明智の助手)/五十嵐めぐみ

夏目知子(夏目菊太郎の娘)/朝加真由美

田村刑事/北町嘉朗
タマ子(笹本家の家政婦)/日野繭子

刑事/羽生昭彦
刑事/池田駿介
ホテルのフロント主任/小田草之介

夏目菊太郎/松村達雄

夏目太郎(夏目菊太郎の息子)/篠原靖夫
熱川の刑事/久木 念
倉庫会社員/土屋靖雄

ホテルのフロント係/鈴木謙一
熱川の刑事/沖 秀一
医者/岡本忠幸
手紙を届けた子供/福谷光一

波越警部/荒井 注

山崎(夏目菊太郎の秘書)/荻島真一(荻島眞一)

■ストーリー

明智小五郎(天知茂)と助手の文代(五十嵐めぐみ)は、深夜のビル街に出現した巨大な影に怯える女と出会う。彼女は文代の女子大時代の先輩・笹本芳枝(夏純子)だった。芳枝の夫・静雄は、緑の影に脅かされてノイローゼになってしまったと言う。
翌日、笹本家を尋ねた文代は、居間に倒れている芳枝と、寝室で顔中血まみれの静雄を発見する。その時、文代も何者かに殴られ気絶する。薄れ行く意識の中で文代の目に映ったのは、緑色の影だった。以来、芳枝と静雄は行方不明になってしまう。
波越警部(荒井注)は従兄の夏目太郎が芳枝を偏愛し、また緑色にも執着していたことから容疑者と断定。やがてホテルに緑色の服の男が現れたと通報が入り、トランクに監禁されていた芳枝が発見され無事保護される。回復した芳枝は、叔父で太郎の父親の菊太郎(松村達雄)、従妹の知子(朝加真由美)、秘書の山崎(荻島真一)と伊豆の別荘に 向かうが…
白い人魚の美女 白い人魚の美女 白い人魚の美女

■美女ファイル No.4

夏純子
夏 純子
笹本芳枝役。1949年生まれ(当時29歳)。東京都出身。
1967年デビュー。1970年日活入社。「女子学園シリーズ」に主演し明るいお色気で人気を博す。主な出演作に「不良少女 魔子」(1971年)「不連続殺人事件」(1977年)など
結婚引退後は公の場に姿を見せていませんが、「女子学園シリーズ」のdvd-box(2012年)には音声のみながらスペシャルインビューが収録されています。

■管理人の感想

「土曜ワイド劇場1周年記念娯楽大作」として放送された本作品は、シリーズ4作目にして初めて明智小五郎が登場しない原作からのドラマ化です。原作では、探偵作家の大江白虹と言う青年が狂言回しを演じ、探偵役は乗杉龍平と言う一作限りの探偵が務めています。従ってドラマ版では一応大江の役割を文代さんが担い、そして乗杉探偵の役割は明智小五郎に割り振られていますが、勿論キャラクターは原作通りではありません。
冒頭、巨大な影が芳枝を襲うと言うスリル満点な発端は原作通りに再現されています。ただ、こんな余計なことをしなかったら明智が事件に関与するともなく、従って完全犯罪が成功していたかもしれないのですから、よく考えてみれば少し不自然なプロットです^^;このあたりは、本来明智の登場しなかった原作をベースにしていることから無理が生じてしまったのでしょう。しかし、その後のストーリー自体にはさほど違和感を感じさせるものはありません。

物語は、緑衣の鬼・夏目太郎から執拗に狙われる芳枝を軸に展開します。 全身を緑衣で覆い包んだ怪人と言うのは文章で読む限りは不気味なのですが、映像ではやはり滑稽感が先立ってしまいますね。いかにフィクションとは言え、こんなド派手なスーツを着て様になるのは植木等の無責任男ぐらいです^^;
ちなみにタイトルの「白い人魚」と言うのは全裸で水族館の水槽に投げ込まれた芳枝のことですが、これが夏純子本人なのかどうか、はっきりしません。よく似た吹き替えの人かなと思うのですが。
夫・笹本静雄、お手伝いのたま子、従妹の知子、そして叔父の菊太郎と、芳枝周辺の人々が次々太郎の手に掛かります。こういうストーリーの場合は、夏目太郎が真犯人ではないことは明白だし、本当に怪しいのが誰なのかも見ていれば見当がつくわけですが、視聴者任せで何となく謎が解けてしまうのでなく、きちんと「二つの不可解、五つの不可能」を提示して論理的に道筋を立てています。
「不可解」といえば、明智が何故緑色の怪人と同じ格好をして洞窟に入り込んでいたのか、わかりません。「訳はあとで話す」と言いながら結局明かされず終いなので、視聴者にとって不可解なままです。無理矢理解釈すれば、動機の解明を重視する明智先生としては、やはり犯人そのものになり切ってしまうことが不可欠だったのかもしれません。それにしても、いかに普段から派手なスーツを好む明智先生とは言え、さすがに緑色のまぬけなマスクとマント姿ではダンディ形無しですね^^;
謎解きシーンでは「変装ベリベリ」で松村達雄と入れ替わって華麗なる明智先生出現。「変装ベリベリ」自体は2作目の「浴室の美女」でもありましたが、この時は謎解きシーンではなかったので、事実上の初公開と言ってもいいでしょう。服装の方はまだワンタッチでベリベリではなく、自分でガウンを脱いでいるあたりに初期らしさが伺えます。
最後は「明智…呪ってやる…!!」と強烈なダイイングメッセージを残して、犯人が自殺(なんでわざわざ水槽に入るのかよくわかりませんが)。そう言えば途中でも芳枝から「先生って親切そうに見えて、根は冷たい方なんですね」、山崎からは「僕は明智さんの無能ぶりにがっかりしているんです」「何が名探偵です!」などとコキ降ろされていましたが、今回の明智は最後まで散々に言われっ放しでした。

劇中、文代さんが女子大で「テニス部」に所属していたという「過去」が判明しています。でもそれは物語の展開とは、勿論何の関係もありません^^;ただ、今までは単なる明智の「助手」と言う以外に特徴のなかった文代さんに、具体的な性格が肉付けされた点は注目に値します。 と言うのも、この作品において明智先生に対する文代さんの「焼き餅」、つまり先生と弟子の関係と言う以上に異性として愛情を抱いていることが、シリーズ史上初めて明らかにされるからです。 後々定番になる台詞「先生ったら、ほんっとに美人に弱いんだからっ」も初登場していますし、明智に向かって文代さんがこんな風にズケズケとした口を利くのもこれが初めてだったはずです。 一方、この作品では明智のクールな女性観も明確になっています。 1〜3作目では物語開始早々から「美女」に陥落してしまっていた明智ですが、本作では、実は文代さんが焼き餅焼くほどには美女(芳枝)に関心を示していません。前作「死刑台の美女」では人妻から激しい告白を受けて思わず逃げ出してしまったウブな(?)明智でしたが、本作では同じく人妻の芳枝に対して「美しい人と言うのは、知らず知らずのうちに罪を作っているものです」などとキザな台詞でおだてておきながら、その気になった相手から迫られると余裕で冷たく袖にすると言う成長(?)を見せています。

白い人魚の美女白い人魚の美女 夏純子さんは比較的早く結婚・引退してしまったので、この作品あたりは既に芸能生活終盤の時期でしょうか。典型的な猫系顔で、必ずしも美人ではないのですが、非常に色っぽくて危険な香りのする女優さんです。
荻島真一さんは後に「白い乳房の美女」にも出演しています。80年代の「土曜ワイド劇場」では顔の一人で、自信過剰で野心的な青年実業家やエリートサラリーマンがはまり役でした。天知さん同様に50代の若さで亡くなられてしまったことは惜しまれます。
松村達雄さんは映画「男はつらいよ」シリーズの二代目おいちゃん役として有名。独特の台詞回しに特徴があり大映ドラマ「少女に何が起ったか」での学長役はものまねタレント松村邦洋の持ちネタになっていました。











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