江戸川乱歩の美女シリーズ
江戸川乱歩「黒蜥蜴」より 悪魔のような美女
悪魔のような美女
制作松竹 テレビ朝日
放送局テレビ朝日系列「土曜ワイド劇場」
放送日1979年4月14日(土) 21:00-22:54

■スタッフ

プロデューサー/植野晃弘 佐々木 孟
原作/江戸川乱歩「黒蜥蜴」より
脚本/ジェームス三木
音楽/鏑木 創 撮影/小杉正雄
美術/梅田千代夫 録音/山本忠彦 照明/佐久間丈彦 編集/鶴田益一
助監督/増田 彬 装置/谷津勝利 装飾/鈴木章司 記録/岡田真理 進行/田沢連二
美粧/ビアンコ 調音/松竹映像録音スタジオ 衣裳/松竹衣裳 現像/東洋現像所 プロデューサー補/徳重里司
製作主任/吉岡博史 協力/伊東温泉 ホテルサンハトヤ 衣裳協力/キングシープ紳士服
衣裳協力/株式会社ロコ・アトリエ・タカダ デザイナー/Eze加藤克彦 Claudine塩谷純子 CAPUCCI湯浅幸子
監督/井上梅次

■キャスト

明智小五郎(私立探偵)/天知 茂

文代(明智の助手)/五十嵐めぐみ

早苗(岩瀬庄兵衛の娘)/加山麗子

雨宮(黒蜥蜴の手下)/清水章吾

岩瀬庄兵衛(宝石商)/柳生 博

船長/大前 均
田村刑事/北町嘉朗

美青年/託摩繁春(宅麻伸)
小林少年(明智の助手)/柏原 貴

松吉(黒蜥蜴の手下)/羽生昭彦
岩瀬家の家政婦/水木涼子
船員(黒蜥蜴の手下)/工藤和彦
ホテルの支配人/加島 潤
刑事/岡本忠幸
コック(黒蜥蜴の手下)/鈴木謙一

パトカーの警官/市東昭秀
パトカーの警官/篠原靖夫
浮浪者/沖 秀一
刑事/加藤真琴
刑事/刀原章光
刑事/山崎純資

剥製の白人女性/マリーオーマレイ
剥製の黒人/ウイリードーシイ
/荒川マミ
/高林 謙
/椿 ゆき
アナウンサー/吉沢一彦
 
波越警部/荒井 注

黒蜥蜴(緑川夫人)/小川真由美(特別出演)

■ストーリー

宝石商・岩瀬(柳生博)に怪盗・黒蜥蜴から「5月12日午前12時、あなたの一番大切なものを頂戴します」と言う盗難予告状が届く。時価20億円のダイヤ「エジプトの星」を秘蔵していた岩瀬は明智小五郎(天知茂)に警護を依頼する。
当日の夜、岩瀬が宿泊する伊東のホテルを波越警部(荒井注)の部下が固め、部屋では明智と波越、岩瀬、そして岩瀬が懇意にしている緑川夫人(小川真由美)も「エジプトの星」を守る。だが実は黒蜥蜴が狙っていたのは岩瀬の一人娘・早苗(加山麗子)だった。早苗は黒蜥蜴の部下・雨宮(清水章吾)の手によって誘拐されてしまうが、文代(五十嵐めぐみ)と小林(柏原貴)の活躍で奪還し事無きを得る。更に明智は緑川夫人の正体を黒蜥蜴だと見破った。緑川夫人は明智たちに催眠ガスを浴びせ、紳士に変装して追跡の目を晦まして姿を消した。
東京に戻った明智のもとに黒蜥蜴から再び挑戦を予告する電話がかかる。名探偵と女賊との、世紀の対決が始まった…!!

■美女ファイル No.8

小川真由美
小川真由美
黒蜥蜴(緑川夫人)役。1939年生まれ(当時39歳)。東京都出身。
1961年、文学座付属研究所に第一期研究生として入所。63年「母」(新藤兼人監督)で映画初出演。 同年のテレビドラマ「孤独の賭け」では天知茂さんと共演し、映画「座頭市の歌が聞こえる」(1966年)でも共演。
主な出演作にTV「アイフル大作戦」(1973年)「女ねずみ小僧」シリーズ、映画「八つ墓村」(1977年)「鬼畜」(1978年)など。

■管理人の感想

誰にでも振り返りたくない過去はあるもんですが、高名な俳優さんにとっては、駆け出し時代のB級な役柄のことはあまり触れられたくない場合が多いでしょう。
若い頃の宅麻伸さんは天知茂さんの付け人をしていたことから、このシリーズにも何度か端役で出演していますが、本作では黒蜥蜴に剥製にされる「美青年」を演じています。それも黒ブリーフ一丁のすっ裸で、鎖に繋がれた状態で…。う〜ん、観ている方としても、ちょっと恥かしい(/ω\) やっぱり、今のご本人にとっては黒歴史なんでしょうかね…。
それはさておき、原作は乱歩唯一の女賊物。謎解きより名探偵と怪盗との対決を前面に押し出している点では「黄金仮面」の系統に属します。三島由紀夫によって戯曲化されていることでも有名ですが、1962年に大映で美女シリーズの井上梅次監督がメガホンを取って黒蜥蜴=京マチ子、明智小五郎=大木実と言う配役で映画化されています(大映版「黒蜥蜴」)。
更に天知さんにとっても、三島の推薦で舞台版(1968年、黒蜥蜴は美輪明宏)に出演したことが、そもそもの明智役との出会いでした。そういう意味ではこのシリーズの中で「黒蜥蜴」を再演することは、まさに満を持して、という感じだったかもしれません(ちなみに「土曜ワイド劇場」レギュラー放送の時間枠は本作品から現行の2時間に拡大されています)

乱歩は三島戯曲版に対して、
「筋はほとんど原作のままに運びながら、会話は三島式警句の連続で、子供らしい私の小説を一変して、パロディというか、バーレスクというか、異様な風味を創り出している」
と述べていますが、このドラマも乱歩よりは三島版の影響を強く受けた作りになっています。 例えば、夕日を背景にモノローグで対話する明智と黒蜥蜴のシーン(「最後の勝ちはこっちのものだ…」)は原作になく、完全な三島版からのパクリです。 トランプをしながら繰り広げられる大人の駆け引きなども、ムーディと言うか、セクシーと言うか、わざとらしいと言うか…普通だったら観ている方が恥かしくなってしまいそうなキザな芝居のオンパレードですが、それを何の違和感もなく演じ切ってしまっていて様になる俳優は、やはり世界広しといえども、我らが天知茂先生をおいてほかにいないでしょう。

ストーリーは原作を踏襲しつつ、ところどころにドラマ版ならではのアレンジも加えつつ展開しています。 まず最初にホテルで黒蜥蜴が「エジプトの星」を狙うと見せかけて実は早苗を誘拐する…と言うのはこのドラマのオリジナル。 更に原作&三島版では、中盤で岩瀬邸に侵入して早苗を拉致するのは部下の雨宮の役割でしたが、このドラマでは黒蜥蜴自身に変更されています。そのお陰で小川真由美さんのキャットウーマンみたいなわけのわかんないアイマスクとマント姿や入浴シーンが見られました^^; ただ予算不足だったのか、前半の舞台となるホテルが伊東温泉の「サンハトヤ」と言うのは安っぽくてかなり萎えます(おそらくタイアップだったのでしょう)。 また、原作では通天閣(三島版では東京タワー)だった宝石の受け渡し場所が競艇場に変更されているのも、セットを組む余裕がなかったからなんでしょうが、ちょっとズッコケますね。 更に致命的なのは、黒蜥蜴の美術館のショボさです。特に、剥製の人間がたった4体ってのは少なすぎ。せめて倍は欲しかったところです。
驚いたのは、黒蜥蜴の手下の雨宮(清水章吾)が水槽に漬けられて死んでいたシーン。これって、つまり、明智が殺したってことになるんでしょうか??いかに相手が悪人とは言え、明智先生が殺人を犯すなんて・・・(@o@) もう一つは、例の「変装ベリベリ」の場面。いつものように別の俳優から天知先生に入れ替わるのではなくて、ニセ松吉も天知先生自身が演じていたことです。最初は確かに本物の松吉(別の俳優さん)だったはずなんですが、、、どこで天知先生に入れ替わったんでしょう?全く気づきませんでした。

黒蜥蜴を演じた小川真由美さんは今回はシリーズ中で唯一「特別出演」と但し書きがつく別格の扱いなんですが、当時からそんなに大物だったっけ…。いや、私は「アイフル大作戦」以来の小川さんのファンなので、別に文句を言ってるわけじゃないのですが。クール、セクシー、そしてキュートな魅力の女優さんですが、あえて難を言えばこの場合黒蜥蜴の人間離れしたゴージャス感がイマイチ足りない感じがすること。どっちかと言えば小川さんは、「アイフル大作戦」にしろ「女ねずみ小僧」にしろ、庶民的な親しみやすさの方が勝っていた気がするのです。
柳生博さんは「非情のライセンス」第3シリーズ(1980年)ではレギュラーの刑事役で天知さんと共演しています。クイズ番組「100万円クイズハンター」の司会でもお馴染みでした。奥様が初代峰不二子の二階堂有希子さんだと知った時は驚いたなー。










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