江戸川乱歩の美女シリーズ
江戸川乱歩「白髪鬼」より 宝石の美女
宝石の美女
制作テレビ朝日、松竹
放送局テレビ朝日系列「土曜ワイド劇場」
放送日1979年1月6日(土) 21:00-22:24
監督井上梅次
脚本宮川一郎
音楽鏑木 創

■キャスト

明智小五郎(私立探偵)/天知 茂

大牟田ルリ子(大牟田敏清の未亡人)/金沢 碧

文代(明智の助手)/五十嵐めぐみ

川村(画家、ルリ子の愛人)/小坂一也

住田女医/奈美悦子
西岡(宝石泥棒)/睦 五郎

田村刑事/北町嘉朗
小林少年(明智の助手)/柏原 貴

豊子(ルリ子の妹)/田島はるか
不動産屋/岡部正純(岡部征純)

寒川警部/山本幸栄
砂浦署の刑事/羽生昭彦
検視官/山崎純資
西岡の仲間/沖 秀一

ホテルのフロント係/託摩繁春(宅麻伸)
ホテルのフロント係/工藤和彦
釣り人/山本伸二
造船所員/加藤真琴

釣り人/篠原靖夫
/鈴木章司
医者/園田健二
アナウンサー/戸谷光輝(戸谷光照)

波越警部/荒井 注

里見/田村高廣

■ストーリー

宝石強盗の西岡(睦五郎)が脱獄。殺された仲間の今際の言葉から、西岡は白髪のカツラで変装していると判明する。やがて静岡県警から、伊豆の大富豪・大牟田邸に西岡らしい白髪の男が現れたとの連絡が入り、波越警部(荒井注)とともに明智小五郎(天知茂)が現場に向かう。
大牟田家は当主の敏清が1年前に事故でなくなり、現在は若く美しい未亡人のルリ子(金沢碧)と画家で愛人の川村(小坂一也)、ルリ子の妹の豊子(田島はるか)が住んでいた。そこへ、売りに出していた別荘の新しい買い手として白髪の老人・里見(田村高廣)が案内されてくる。その顔を見たルリ子たちは驚く。里見は死んだはずの敏清そっくりだったのだ…
宝石の美女 宝石の美女 宝石の美女

美女ファイル No.7

金沢碧
金沢 碧
大牟田ルリ子役。1953年生まれ(当時25歳)。埼玉県出身。
1975年のドラマ「北都物語」のオーディションでヒロインに選ばれデビュー。「俺たちの旅」のヨーコ役で有名。
このシリーズには第15作「鏡地獄の美女」にも2度目の美女役で出演しています。 ちなみにこのシリーズでのヌードシーンはどちらも吹き替えでしたが、「俺たちの旅」第1話の着替えシーンでのヌードは知る人ぞ知るお宝映像。

■管理人の感想

1979年のお正月作品。しかも前年末に放送された第6作「妖精の美女」から年をまたいで2週連続での放送だったわけですから、ゆく年を美女シリーズとともに送り、くる年を美女シリーズとともに迎えるとは、 なんとも贅沢な?時代だったものです。
原作は後の「大時計の美女」(「幽霊塔」)と同じく、黒岩涙香の小説からの翻案です(尤も、涙香の作品自体が外国小説の翻案ですから、正確には翻案の翻案ということになりますが)。 従って原作には、明智小五郎は勿論のこと探偵役自体が登場しません。棺の中で甦り、その時のショックと恐怖で白髪になってしまった男が、自分を殺そうとした姦婦姦夫に復讐する…と言うお話です。
ドラマでは当然、そこに明智小五郎を絡める展開に改変しているのですが、物語の大筋は変わっていません。その結果、正直言って明智先生はいてもいなくても事件の推移に全然関係なく、最後の最後でとってつけたようにわかりきった推理をしてみせるだけなので、かなり影が薄いです。先生の大活躍が見たいファンにとっては少々ガッカリの作品ですが、、、それでもドラマのクオリティそのものがいささかも落ちていないのは、白髪鬼を演じた田村高廣の怪演によるところが大です。
何しろ白髪「鬼」と言うぐらいですから、単に髪の毛が白いだけじゃありません。その髪を逆立て、青白い死人メイクをした姿で登場。その姿で風呂場覗きをやったり、寝室に現れて脅かしたり。下手をすればドリフのコントになってしまいかねないような馬鹿らしい役を、この当時既に名優の地位を築いていた渋いベテランの俳優さんがよくやってくれたなーと今更ながら思います。尤も、普段真面目なお芝居をされている方にとっては、これほど現実離れした荒唐無稽な役を演ずる機会は滅多にないでしょうから、むしろ案外楽しんで演じてくれたのかもしれませんけどね。「里見」と「生前の敏清」の二役を演じ分けるために、声色を使って妙に細い声で喋ったりする田村さんを見ていると、役づくりにも結構ノリノリだったりして(?)
宝石の美女そういうわけで、この作品に限っては主演・田村高廣で、明智小五郎役の天知茂の方が特別出演みたいな感じに見えてしまうのです。 最初に述べたように、明智先生は白髪鬼の復讐劇にノータッチ。しかしそれでは全く先生の出番がなくなってしまいますから、テレビオリジナルのストーリーとして、そこに宝石強盗の脱獄事件を絡めています。その事件の捜査で大牟田家にやって来た先生ご一行がたまたま白髪鬼こと里見と遭遇することになっているのですが、この設定がかなり無理矢理で苦しいのは致し方のないところ。宝石の美女 結局、先生は事件の真相に疑問を抱きつつも深入りできないでいるようなあやふやな立ち位置で、何だかぱっとしないのですが、主役(一応)である以上はそれなりの見せ場も用意してあって、それが里見との大牟田家墓所前での三度にわたる邂逅による対決シーンです。ただこの場面でも天知さんの明智の方が、何となく田村さんの里見に気合負けと言うか貫禄負けしているように見えてしまうのは、気のせいでしょうか^^;
余談ですけど天知さんと田村さんはどっちが俳優として「格上」なのか、イマイチよくわかりません。年齢は田村さんが上ですが芸能界入りは天知さんの方が先だし、大スター阪妻の御曹司として松竹でデビューして以来メジャーを歩んできた田村さんに対して、天知さんは主演スターとは言え新東宝マイナー路線だし^^;
この作品のもうひとつ特徴は、タイトルの「美女」が根っからの「悪女」だと言う点です。 ヒロイン瑠璃子は愛人をそそのかして夫を殺害して財産を奪い取った上、やがてはその愛人も捨てて自分1人がいい目を見ようとする、どこにも同情の余地のない女として描かれているからです。このシリーズの「美女」は、犯人であるとないとに関わらず「哀しい運命に翻弄された女性」というのが共通のコンセプトになっていると思うのですが、本作だけは例外。宝石に目が眩み、とことん欲に狂った挙句に、果ては本当に発狂してしまう汚れ役です。最後はブラウスの前をはだけたあられもない姿で岩場をさ迷い歩き、貝殻を宝石と思い込んで拾い集めると言う、何とも因果応報的な姿をバックにエンドロールが流れます。 演じた金沢碧さんは清純派の女優さんですから、内心は嫌だったかもしれませんが、そんな気配を微塵も感じさせずに演じ切ってくれているのは、さすがプロの女優さんです。天知先生は勿論ですが、田村さんにしろ金沢さんにしろ、このシリーズは一級の出演者たちが真摯に取り組んでくれていたからこそ現在も名作として語り継がれているのだと、改めて感じ入った次第です。










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