昭和24年、神戸。身寄りのない寺田辰弥(荻島真一)はラジオで自分を探している者がいると知り尋ね主の諏訪弁護士(内田朝雄)を訪ねる。
そこで辰弥は自分が岡山県八つ墓村の旧家・田治見家の跡取りであることを知らされる。だが迎えに来た母方の祖父・丑松(北村英三)が辰弥の目の前で毒殺される。
辰弥は分家の未亡人・森美也子(鰐淵晴子)の案内で八つ墓村へ向かう。その車中で美也子から八つ墓村にまつわる伝説を聞く。
戦国時代、毛利に敗れた尼子の残党8人が村に住み着くが財宝目当ての村人達に虐殺された。その祟りを恐れた村人達によって八つ墓明神が祀られ、以来村は八つ墓村と呼ばれるようになったと言う。
田治見家に到着した辰弥は大叔母にあたる双子の姉妹・小竹(毛利菊枝)小梅(新海なつ)、腹違いの姉・春代(松尾嘉代)に対面する。
そこで初めて辰弥は26年前、父・要蔵(中村敦夫)が母・鶴代(神崎愛)を無理やり犯して自分が生まれたこと。鶴代が赤子の辰弥を連れて
逃亡したことに激怒し発狂した要蔵が村人32人を惨殺したことなどを知る。
「横溝正史シリーズU」の第1作。
第1シリーズ1作目が映画でもヒットした「犬神家の一族」だったように、この「八つ墓村」も前年秋に公開された松竹の映画版
「八つ墓村」が大ヒットを記録していました。
ただ映画版は「たたりじゃ〜!」の流行語を生んだようにオカルト色を強調した作品になっていました。
それはそれで面白かったのですが、ファンとしてやはり原作通りに映像化して欲しいものです。その点、このテレビ版は概ね原作に沿った内容で、ドラマの出来自体も悪くありません。
原作と違うのはまずヒロインのひとりである典子が登場しないこと。と言うか、そもそも「八つ墓村」が映像化される場合、たいてい典子って無視されるんですよね。
女性キャラは美也子、春代がいるので3人も要らないと言うことなんでしょうか。「お兄様萌え」なキャラは現代だったらウケそうな気もしますが。
もうひとつは、犯人の動機及び共犯者の有無。それに伴って、原作で殺されるはずのない人物が殺されています。
ただ、田治見要蔵の32人殺しは映画版のインパクトには到底及ばないし、鍾乳洞のスケールも小さいですが、これはしょうがないですね。
出演者も美也子役の鰐淵晴子は「?」な感じもしましたが、荻島真一はショーケンよりずっといいですし、薄幸な春代役の松尾嘉代は後年土曜ワイド劇場で演じた女傑イメージからすると違和感ありますが、意外と好演でした。
ところが真相が解明する最終回になると、ちょっとアリャアリャな展開。確かに原作は犯人の追い詰め方にやや問題があるのでテレビ的に見せ場を変える必要はあると思いますが、しかし事件の結末そのものを改変するってのは、探偵小説の巨匠に対して無礼を通り越して不遜です。しかも全ての物語が終わったと思った後で実はもう一幕あって、原作と真逆のアンハッピーエンドに唖然…うーん、どうしてもやっぱり「たたり」にしたいんですネ。この辺はもう、横溝と言う作家を単におどろおどろしいだけと捉えるか、その向こう側に本格ミステリーを求めるかの違いにもなってくるんでしょうけど、視聴者全てがミステリーファンとは限らないテレビの特性を考えると、原作の完璧な映像化は難しいのかもしれません。