昭和26年。瀬戸内海小豆島付近。連絡船で旅をしていた金田一耕助（古谷一行）は海運王として知られた大道寺の未亡人・綾子（司葉子）と知り合う。その時、波間を漂う一艘の小船が発見される。小船には棺に入れられた美少年が眠っており、胸に「俗名　虹之助之霊」と書かれた位牌を抱いていた。やがて虹之助（長尾深雪）は意識を取り戻すが、盲聾唖の三重苦を背負っていた。深く同情した綾子は虹之助をひきとることにする。
箱根芦ノ湖に立ち寄った綾子は金田一と虹之助、女執事の君枝（野中マリ子）を伴って船上から花火大会を見物する。そこで綾子の知人の甲野静馬（富川�K夫）、由美（服部妙子）兄妹と鵜藤五郎（睦五郎）に偶然出会う。その時、突然、虹之助が立ち上がり船のオールで由美に襲いかかった。五郎が止めに入り由美は逃れるが、金田一は湖に落ちてしまう。虹之助は君枝に連れられて先に山のホテルに帰る。
甲野兄妹たちと別れた綾子と金田一はホテルへ戻ろうとするが、その途中で金田一は京都のホテルでも見かけた謎の尼僧（堀永子）と出くわす。気になった金田一は尼僧の後を追うが、何者かに殴られて気を失う。金田一と別れた綾子は一人でホテルへ戻るが、部屋の前で君枝がナイフを胸に突き立てられて絶命していた。
綾子は容疑者として箱根署で取り調べを受けるが、金田一が東京の日和警部（長門勇）に応援を求めたお蔭で釈放され鎌倉の邸宅へ戻る。綾子の懇願で大道寺邸に居候することになった金田一はある晩、綾子が男（池部良）と森の中で密会しているのを目撃する。
翌朝、甲野家から兄妹の母・梨枝子（富田恵子）が小豆島から上京したと電話がある。綾子は虹之助を伴い七里ケ浜の甲野家別荘を訪ねるが梨枝子しかおらず、静馬と由美は海岸に出かけていて留守だった。綾子は虹之助を甲野家に遺して海岸に二人を捜しに行く。
一方、金田一は日和警部と会って綾子や甲野家の素性を聞き、更に昨夜綾子と密会していた男が甲野兄妹の従兄弟にあたる志賀恭三であると知る。金田一と日和が甲野家を訪れた時、ちょうど綾子が静馬と由美を連れて戻って来たところだった。そこに鋭い女中の悲鳴が聞こえ、一同が中に駆け込むと、血だらけになって絶命した梨枝子が倒れており、そばで暴れる虹之助が五郎に組伏せられていた。

シリーズ最大の珍作と呼び声が高い？作品。原作は「真珠郎」同様に金田一が登場しない戦前の小説であり、謎の美少年の周囲で起こる連続殺人と言う物語の構造も「真珠郎」と同じです。ただ「真珠郎」ほど本格寄りではなく謎も単純。しかし司葉子・池部良と言う往年の東宝スターが出演する以上は見せ場を作らねばならなかったのか、ドラマはストーリーを大幅に水増し。原作の分量から言ったら2回で済む話を4回に引き伸ばした上、犠牲者も原作の3人に対し8人！「八つ墓村」をも上回るペースで殺人が起こります。なのでその分の辻褄は合わないのですが、それは一切無視。しかも事件の際には常に虹之助が傍らにいるにも関わらず、金田一には皆目犯人の見当が付かない有様。それほど金田一をボンクラにした理由は何と綾子夫人への恋だった！支離滅裂にもほどがあります。
司、池部の両人とも実年齢より若い役柄を演じているため、注意深く見ていないと人物の相関関係に混乱を来します。