昭和22年、那須市。信州財閥の巨頭犬神佐兵衛(岡田英次)が死去。その莫大な遺産の行方を記した遺言状は長女松子(京マチ子)の一人息子・佐清(田村亮)の復員を待って、
顧問弁護士の古舘(西村晃)により発表されることになっていた。
金田一耕助(古谷一行)は古舘の助手・若林から調査の依頼状を受け取り那須市を訪れる。だが金田一が会う直前に若林は何者かに毒殺される。遺言状を盗み読んだ若林はその内容に何か恐ろしい危惧を抱いていたらしい。
やがて松子が佐清を伴って帰宅し、いよいよ遺言状が公開されることになった。古館から改めて依頼を受けた金田一も同席するが、席に現れた佐清は白いゴムマスクをかぶった異様な姿だった。更に古館弁護士が発表した遺言状は、佐清、佐武(成瀬孝)、佐智(松橋登)の何れかとの結婚を条件に遺産は全て野々宮珠世(四季乃花恵)に送られるという内容だった。
1970年代半ばに空前の「横溝正史ブーム」が起こります。その頂点が大ヒットを呼んだ76年10月公開の角川映画「
犬神家の一族」でした。テレビの「横溝正史シリーズ」がスタートしたのはその半年後。第1弾はやはり映画と同じ作品でした。従ってまだ映画版の記憶も新い時期だっただけにやりにくい面もあったのではないかと思われますが、凝った美術に定評のある大映の製作で豪華な出演者を揃え、原作者横溝正史をして「映画に劣らぬ」と満足させる出来になりました。
内容は第1回が佐兵衛の死から遺言状発表まで、第2回で佐武殺し、第3回で佐智殺し、そして第4回では映画でも有名なあの「湖からニョッキリ二本足」が描かれ、最終回が結末まで。原作に殆ど忠実だし映画よりたっぷり時間をかけられるのでくどいほど細かく描かれています。その分ストーリーがわかり易いのは強みですが、現在DVDでまとめて見ると長くて途中でややだれます。尤もリアルタイムでは1週間ごとの放送だったのですからこれでもいいのでしょう。
金田一耕助役に抜擢された古谷一行は当時まだそれほど知名度が高くありませんでしたが、この役を得て一気にトップスターへブレイク。犬神家の三姉妹を演じた京マチ子、月丘夢路、小山明子は大女優の貫禄を見せ、特に京マチ子は映画版の高峰三枝子と甲乙つけ難いはまり役。岡田英次、西村晃、ハナ肇も個性的な名優です。ただそれ以外の配役になるとややランクが落ちる感じで、特に珠世役の四季乃花恵はこの作品以外では全く見たことも聞いたこともない女優さん。宝塚の人らしいのですが顔立ちも雰囲気も地味でヒロインにしてはいささか精彩に欠けます。