横溝正史シリーズ
獄門島 第一回
制作毎日放送 東宝
放送局TBS系列
放送日1977年7月30日(土)22:00-22:55

■キャスト

了然(千光寺住職)/中村翫右衛門

荒木村長/河原崎国太郎

村瀬幸庵(漢方医)/金子信雄

鬼頭早苗(千万太の従妹)/島村佳江

鬼頭月代(千万太の妹)/梶原 恵
鬼頭雪枝(千万太の妹)/立枝 歩
鬼頭花子(千万太の妹)/萩奈穂美

竹蔵(本鬼頭の潮つくり)/江幡高志
床屋の清公/三遊亭若円遊
了沢(千光寺典座)/原 康義

鬼頭嘉右衛門(本鬼頭先代)/滝沢 修(特別出演)

鬼頭与三松(本鬼頭当主)/仲谷 昇
勝野(嘉右衛門の妾)/斎藤美和

漁師/野呂圭介
鬼頭千万太(与三松の息子)/角野卓造
/常泉忠通

鵜飼章三(分鬼頭の居候)/三善英史

清水巡査/河原崎長一郎

お志保(儀兵衛の後妻)/浜木綿子(特別出演)

金田一耕助(私立探偵)/古谷一行

■ストーリー

昭和21年夏。金田一耕助(古谷一行)は戦友の鬼頭千万太(角野卓造)の遺言で彼の故郷である獄門島を訪れる。千万太によれば、彼が生きて帰らない場合は三人の妹たちの命が危険にさらされるというのだ。千光寺の了然和尚(中村翫右衛門)に案内されて鬼頭家を訪れた金田一は、千万太の妹の月代(梶原恵)、雪枝(立枝歩)、花子(萩奈穂美)、そして従妹の早苗(島村佳江)を紹介される。しかし千万太の通夜の晩に花子が行方不明となり、千光寺境内で梅の木に逆さ吊りされた無惨な死体となって発見される。

■管理人の感想

テレビ版最終回の1週間後には石坂浩二主演の映画版「獄門島」(市川崑監督)が封切られています。しかも製作はどちらも東宝。言わば競作の形がとられたわけですが、映画版が原作とは犯人を変え、原作者横溝正史に「私も犯人を知りません」と言わせたのを売り物にしていたのに対して、テレビ版の犯人は原作通り。尤も、だからと言ってテレビ版が優れているわけではないし、はっきり言えば第1シリーズの中では一番出来が悪いです。
まずのっけから驚かされたのはドラマの冒頭が嘉右衛門さんの死から始まり、枕元に了然和尚、荒木村長、幸庵の3人を集めて色紙を渡している場面を描いていること。 これって物語の肝心要の部分を半ばネタバレしているようなもんじゃないでしょうか。
次にわけがわからないのは、第2・第3の殺人の犯人が原作とは入れ替わっていること。ネタバレするので詳しく書きませんが、 犯人の腕があの状態でも殺人ができる、と言う点が第3の殺人のキモになっているわけですから、入れ替えてしまっては全く意味がありません。
更に放送規制によって台詞が変更されたせいで「季違いじゃが仕方がない」と言う言葉のミスディレクションが台無しです。お陰で与三松(仲谷昇)の存在が中途半端で宙に浮いたものになってしまいました。だったらいっそのこと与三松自体を登場させない方がよかったと思います。
そして最もがっかりしたのは、最後に復員詐欺によって犯罪の動機そのものが瓦解してしまうと言うクライマックスの悲劇が全く盛り上がりに欠けていたこと。これがきちんと描かれない「獄門島」なんて、気の抜けたビールみたいです。
と言うわけで内容はかなりグダグダですが、出演者は映画版に劣らず豪華です。中でも 前進座の中村翫右衛門と河原崎国太郎、民藝の滝沢修の共演なんて、少なくとも他の映画・ドラマでは見られないんじゃないでしょうか。
早苗さん役の島村佳江はネームバリュー的にはやや格落ちですが、管理人的には映画版より上です。まあどっちを好むかは観る人次第ですが、 清潔感のある白いブラウスがよく似合う質素可憐な姿は、ひっそりと兄の帰りを待つ清純な島の乙女と言う早苗さんの原作イメージに近いと思います。 惜しむらくは原作と違い金田一が早苗さんによろめく描写がなかったせいか、 いまいちヒロインとしてのインパクトが弱いんですよね。 それにしてもこの頃の島村佳江さんはまだ21歳ぐらいだったとは思えないほどの、落ち着きのある大人の美しさを持っています。
ちなみに、最終回の同日同時刻にテレビ朝日の「土曜ワイド劇場」では江戸川乱歩の美女シリーズ第1作「氷柱の美女」も放送されていました。裏番組で乱歩と正史の作品が競作した例も珍しいでしょう。












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