影の車
影の車
製作松竹大船撮影所
配給松竹
公開日1970年06月06日
上映時間98分(カラー/シネマスコープ)
併映「喜劇 男は愛嬌」(森崎東監督/渥美清)

■スタッフ

製作/三嶋与四治、杉崎重美

原作/松本清張「潜在光景」より 脚本/橋本 忍

撮影/川又 昂 美術/重田重盛 音楽/芥川也寸志

録音/栗田周十郎 調音/松本隆司 照明/三浦 札 編集/浜村義康 光学技術/石川智弘 監督助手/山根成之

装置/中村良三 装飾/印南 昇 進行/玉生久宗 衣裳/東京衣裳株式会社 現像/東洋現像所 製作主任/吉岡博史

協力/東京生命保険相互会社 株式会社日本旅行 横浜フラワーデザインスタジオ 入江久代 殿内サト子 レストランベルベデーレ

監督/野村芳太郎

■キャスト

小磯泰子/岩下志麻

浜島幸雄/加藤 剛

浜島啓子(浜島の妻)/小川真由美
浜島のおじさん/滝田裕介
浜島の母親/岩崎加根子

医師/稲葉義男
石川(浜島の友人)/近藤洋介
主婦(生け花の生徒)/野村昭子
未亡人/川口敦子

/関口銀三
/阿部百合子
/新田勝江
/清水良英
泰子の夫(写真)/長谷川哲夫
精密検査の医師/早野寿郎

/竹口アキ子
/志賀真津子
/村上記代
/水木涼子
/大塚君代
/戸川美子
母親の店の客/谷よしの
/槇芙佐子
/本橋和子
/峰 久子
/後藤泰子
/堀真奈美

/鈴木信子
/千早旦子
/白川恵子
/光 映子
/茅 淳子
/和田恵利子
/土紀養児
/土田桂司
/松原 直
/大久保敏男
/高杉和宏
/戸張正男

小磯健一/岡本久人
浜島の少年時代/小山 梓

刑事/芦田伸介


<<参考>>
小磯貞雄/永井智雄
Kinenoteに記載されているがクレジットも出演シーンもない)
浜田寅彦
(ポスターに記載されているがクレジットも出演シーンもない)

■ストーリー

物語。旅行案内所に勤める浜島(加藤剛)は或る日、帰宅途中のバスの中で偶然幼馴染の泰子(岩下志麻)と再会する。結婚して10年になる妻(小川真由美)との間には子供がなく生活もすれ違いで団地と職場を往復するだけの平凡で味気ない毎日を送っていた浜島と、4年前夫に先立たれ保険外交員をしながら六歳の息子・健一を育てている泰子。2人は何度か会ううちに惹かれ合い、結ばれる。
以来妻の目を盗んで泰子の家を訪れる浜島。だが健一が一向に懐こうとしないのが気になる。そればかりか自分への敵意、やがて殺意すら感じる。浜島は健一に自分自身の幼い頃を重ね合わせる…

■感想

松本清張の連作小説集『影の車』の中から短編「潜在光景」の映画化。
どこにでもいるごく普通の人間がふとしたきっかけから破滅に追い込まれて行くという清張お得意パターンを、脚本・橋本忍、監督・野村芳太郎ら清張作品の映画化では定評のあるスタッフが手がけた心理サスペンスの佳作。
この映画はとてもエロいです。 昼間はキリッと髪を束ね背筋をピンと伸ばしてセールスに歩き、家に帰れば子供に優しい清楚な母親。それが夜になると、ガラス戸を1枚隔てて子供が寝ている隣の部屋で息を殺すようにして愛人に抱かれる…というシチュエーションがすごく淫靡な雰囲気。ラブシーンが多い割りにヌードなどはちっとも見えないにもかかわらず、大人のお色気むんむん漂わせた岩下志麻(当時29歳)の、執拗にアップされるエクスタシーの表情だけで十分お腹いっぱいという感じです^^;不倫関係に陥る過程も丁寧に描かれていて、例えば最初の訪問時にはなかった灰皿が何度目かの時は用意されていたりするなど2人の間の距離がだんだん縮まっていく様子がさりげなく自然に描写されています。
そして母親と愛人との関係を、無表情に見つめている子供が実にコワイ。 素で馬鹿なんだか利口なんだかよくわからないぼんやりした顔つきのこのガキ自体も不気味なのですが、ここに加藤剛自身の子供時代の記憶がオーバーラップしていき、かつてやはり未亡人だった自分の母親が伯父と愛人関係にあって、その伯父を憎悪していたことが劇中で予め明かされているので、妄想のリアリティを増幅しています(この母親と伯父を演じる岩崎加根子と滝田裕介が地味なフツーのオバサン、オジサン然としてるところが却って生々しくて、またいやらしい感じ)。「男の子にとっての母親」は「女の子にとっての父親」ともまた違っていて、この逆のパターンの話はたぶん成立しないのでしょう。芥川也寸志の甘く、そして不安を誘うような音楽も効果的です。







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