君は海を見たか
君は海を見たか
製作大映東京撮影所
配給ダイニチ映配
公開日1971年5月5日
上映時間83分(カラー/シネマスコープ)
併映「樹氷悲歌」(湯浅憲明監督/関根恵子)

■スタッフ

企画/久保寺生郎

原作・脚本/倉本 聰

撮影/中川芳久

録音/須田武雄 照明/上原正一

美術/間野重雄

音楽/池野 成

編集/中静達治 音響効果/小倉信義

助監督/野村尚正 製作主任/薮本和男 現像/東京現像所

監督/井上芳夫

■キャスト

増子一郎(大和造船所の設計技師)/天知 茂
増子正一(一郎の息子)/山本善朗

 
岡崎靖三郎(医事評論家?)/伊東光一
和田医師(小児科医)/花布辰男
営業の男/中田 勉
田宮(一郎の部下)/炎三四郎(速水亮)

 
谷田婦長/日高加月枝
坂本看護婦/小谷野美智子
受付嬢/川内悦子
助手/木島進介

 
中本(労務者)/中原 健
安田/佐山真次
桜井/荒木康夫
執刀医/杉森 麟

 
インターン/関幸四郎
/河島尚真
インターン/夏川圭一
インターン/中舘慎吾

 
増子弓子(一郎の妹)/寺田路恵
木宮佳子(一郎の婚約者)/阪口美奈子
木口博士(正一の主治医)/内藤武敏

矢部教授/中村伸郎
大石先生(正一の担任)/中山 仁

■ストーリー

真っ黒に塗り潰された絵。 学校で「海の絵を描け」と言われて11歳の正一(山本善朗)が描いた絵である。ずっと以前、一度だけ父親に見せてもらったことのある真っ暗な海の底を描いたのだ。
正一の父・増子一郎(天知茂)は海中公園建設の設計技師。仕事一筋の猛烈サラリーマンである増子は妻亡き後、息子を妹の弓子(寺田路恵)に任せっきりで、普段ろくずっぽ話をしたこともない。
ある日、体の異状を訴えた正一を弓子が病院へ連れて行くと大学病院に回され、更に精密検査の結果即座に入院させられる。その間も土佐の建設現場へ行き放しだった増子が漸く帰京し、忙しい中渋々と言った感じで病院に行くと、主治医(内藤武敏)から「ウィルムス性腫瘍が進行しており長くてあと三ヶ月の命」と宣告される。
愕然とする増子。「何故もっと早く気がつかなかったんだ」とつぶやく。すると弓子が「正一は二ヶ月前にも兄さんに言っていたそうよ」と言う。例によって仕事にかまけて、聞き流していたのだ。
残された時間を息子と過ごすため会社に休職願いを出した増子は正一の担任教師・先生(中山仁)を訪ね、父親として何をしてやったらいいのだろうかと尋ねる。大石は正一が描いた黒い海の絵の話をし、「普通の父親と子供のように、海を青いと感じさせてやることが重要ではないか」と言う…。
君は海を見たか 君は海を見たか
君は海を見たか 君は海を見たか

■感想

大映テレビ室の制作により日本テレビで放映された同名連続テレビドラマの映画化(テレビ版の主演は平幹二郎)。
天知茂が大映で主演を取った唯一の作品ですが、あろうことかサラリーマン役、それも不治の病に冒された子供の父親役という究極のミスマッチが強烈です。
「あの」天知茂が息子相手に「パパは…」と語りかけたり、会社で工事の遅れをせっつかれて「文句は天気に言ってくださいよ」と愚痴ったり、作業服姿でラーメンをすすったり、宴会で手を叩いて一緒に歌ったりする場面はある意味でシュール。ここまで「普通の人」を演じるのは珍しいという気がします。
かと思いきや、息子の余命を告知された時などはまるで「江戸川乱歩の美女シリーズ」のDVDカバー写真さながらの凄まじい形相を浮かべたりもします。どうしても天知茂=ニヒルと言う固定観念が邪魔しがちですが、家庭を顧みなかった仕事人間が急にぎこちなく父親らしいことをし始める姿は、普段およそ家庭的なイメージのない天知さんだけに却って説得力があります。一方で、息子が死んだ後で結局自分の自己満足で良い父親を演じていたに過ぎなかったのではないか…と独りくどくど悩むあたりに、天知さん本来の持ち味である孤高のヒロイズムも生かされています。
主治医役の内藤武敏は誠実さに適度の素っ気なさを交えたいかにも医学者らしいと言った雰囲気のはまり役で、物語にリアリティを与えています。また学閥を楯に診療を冷たく拒む嫌味な教授役で中村伸郎が出てきたときは、思わずここは浪速大学(by白い巨塔)かと思ってしまいました。演出も淡々としていていいのですが、ただ肝心な場面で奇を衒ったりするのがちょっと目障り。劇的な場面はむしろ普通に撮った方が良かったと思うのです。







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