明智小五郎(天知茂)と波越警部(荒井注)は推理小説界の大御所・大河原義明(岡田英次)の主催する犯罪研究会に招かれた。パーティに出席したのは若手評論家の姫田吾郎(中条きよし)、大学教授の橋本(草薙幸二郎)、TVプロデューサーの讃岐(北町嘉郎)、女優の山村弘子(吉岡ひとみ)、大河原の助手の杉本治郎(江木俊夫)、そして大河原の若く美しい妻・由美子(夏樹陽子)たちだった。その席上、明智はカマキリを極度に恐れる由美子の姿に異様なものを覚える。
翌朝、皆の目の前で姫田が謎の投身自殺を遂げる。更に数日後には弘子がホテルのプールで全裸死体で発見される。明智は大河原に疑惑の目を向けるが…。
毎回、美女たちが惜しげもなく繰り出す官能シーンが売り物だったこのシリーズ。中でも本作は強烈です。何しろタイトルにいきなり「エマニエル」!ですから。放送当時、このタイトルを見ただけで気恥ずかしくなった覚えがあります。
エマニエルって言っても若い人は知らんでしょうが、日本では1975年に公開され大ヒットしたフランスのポルノ映画「エマニエル夫人」のことで、主演のシルビア・クリステルが裸で籐椅子に足を組んで座っているシーンは非常に有名です(本作でもEDや予告編で夏樹陽子が明らかにそれを模したホーズをとっているシーンがあります)。
ちなみに当時の私はまだ小学生でしたから勿論実物を観てはいないのですが、そのシーンをあしらった宣伝ポスターが登下校の道筋に貼ってあったのですから(って、教育上よろしくないね^^;)、インパクト大でした。
と言う訳で、子供でも知らない者はいない(?)「エマニエル」。その名をタイトルを冠した本作は、何だかよくわからないけど、とにかく凄いらしいと思わせるに十分過ぎるものがあります(予告編じゃ天知先生が大真面目なナレーションの声で「謎の微笑を湛えるエマニエル!」とか言っちゃってるし)。
原作は乱歩の数少ない戦後の作品。戦前の通俗作品と違いエログロ描写は殆どない理知的な文体で書かれた本格推理ですが、"愛するが故に相手を殺さずにはいられない"カマキリのような女主人公の設定が極めて鮮烈です。ドラマはその特色を最大限活かし、都合5度にわたる耽美な官能シーンが繰り広げられ、しかも明智先生まであわやカマキリの毒牙に掛かってしまうという、シリーズ最大のピンチに!
謎解きの後にももう一幕あるなど、見せ場が幾つも用意されてあって最後まで気が抜けません。シリーズ中期の傑作と言ってよいでしょう。
「浴室の美女」に続くシリーズ2度目のヒロイン夏樹陽子さんは、体当たりの演技でエマニエルの名に恥じぬ妖しい魅力を発散しています。モロ見えシーンは明らかに吹き替えですが、それ以外のシーンでもスレスレの際どい露出連発です(見えそうで映さないカメラワークが絶妙)
美女に圧倒されがちですが、男優陣もなかなかのもの。明智小五郎は、美女主導で物語が展開するせいか終盤まで動きが少ないので少し物足りませんが、最後の最後に天知ファンを満足(?)させてくれます。シリーズ初公開のキスシーンもあるのですが、状況が状況だけに、嬉しかったのかどうかはよくわかりません。
シリーズ2度目の岡田英次さんは浴槽の湯の中からブクブクと浮き上がってくる姿を怪演。ちっとは仕事断れよって言いたくなりますが。
中条きよしさんは冒頭でいきなり殺されてしまう役。「必殺」シリーズでブレイクするのはこの翌年からなんですね。
江木俊夫さんは
「黒水仙の美女」の北公次さんに続く元フォーリーブス2人目のシリーズ出演ですが、元アイドルがここまでやるかと言うぐらい濃厚なラブシーンを繰り広げます。現在のジャニタレとのポジションの違いがわかって興味深いです。