明智小五郎(天知茂)は児玉(横内正)という男から、家に幽霊が出るので調べて欲しいと依頼され三浦半島にある時計館に赴く。その館のどこかには児玉の祖先が隠した財宝があると伝説があった。また2年前には児玉の祖母が養女に殺される事件があったと言う。
その夜、明智は時計台に老婆の白い幽霊を見つけ墓地まで追いかける。そこで明智は謎の美女(結城しのぶ)と出会う…。
結城しのぶ
野末秋子役。1953年生まれ(当時25歳)。千葉県出身。
1972年、和洋女子大学を中退して東宝現代劇17期生に入る。
1974年、「大岡越前」第四部でレギュラーでテレビ初出演。1975年、NHK「新・坊っちゃん」にマドンナ役で出演。
1979年の角川映画「蘇える金狼」ではヌードで濡れ場に出演。
原作「幽霊塔」は
「宝石の美女」の原作「白髪鬼」と同様に黒岩涙香の翻案物をさらに乱歩が翻案した作品。幽霊塔の謎を巡る伝奇スリラーなので勿論明智小五郎は登場しません。なので例によってドラマではストーリーに明智を絡ませるのに苦慮しています。
ただ単に幽霊が出ると言うだけでまだ事件も起こらないうちから、明智ばかりでなく波越警部(荒井注)や助手の文代(五十嵐めぐみ)、小林少年(柏原貴)らご一統までぞろぞろと幽霊塔に繰り込んで来るのはいささか展開に無理がある上、やがて起こる殺人事件も何だかとってつけたようで、あまり必然性がありません。しかも最後は事件にしろ肝心の時計塔の謎にしろ何となく解けてしまっているので、よく考えると明智は何をしたんだと言う感じがします。
ビジュアルイメージとして、白い老婆の幽霊がちっとも怖くないのも欠点ですね。何だかやけに楽しそうだし(笑)なのにそれを怖がりまくる横内正が却って可笑しいのですが、そこは迫真の大熱演に免じて大目に見ましょう。
ちなみに横内さん、当時は「水戸黄門」の格さん役(初代)としての厳格なイメージしかなかった頃なので、本作品での卑怯で情けない小悪党役は印象的でした。出番は少ないのですが、欲に目がくらんだ松橋登、根上淳のコミカルな演技もいい感じです。
女優陣はお楽しみの(?)お色気シーンが少し物足りない気もしますが、個人的には赤座美代子のむっちりした肌がちょっと見られたので無問題^^;
天知茂先生扮する我らが明智探偵は、この赤座美代子の妖艶な色仕掛けにも「探偵の第一条件は金と色の誘惑に乗らないこと」との持論を披瀝しきっぱり拒絶して視聴者を感動させ(…たかどうかわかりませんが)、その一方では結城しのぶの呼び出しにホイホイ応じて出かけてしまい、助手の文代さんを嫉妬させます。明智先生と文代さんとのビミョーな関係もこのシリーズの重要な骨格のひとつ。
さて本作のヒロインであり、シリーズ中で私のイチオシ「美女」である結城しのぶさんは
70年代末から80年代にかけてのサスペンス物では常連でした。個人的に彼女と島村佳江、中島ゆたかの3人を勝手に「三大サスペンス美女」と命名しておりました。役柄で言うと中島ゆたかさんはセクシーな美貌とスタイルの良さから悪女ややくざの情婦などで物語途中に殺されてしまうことが多く、翳りのある知的な美人・島村佳江さんは悪女役と薄幸なヒロインが半々ぐらい、そして結城しのぶさんはどっちかと言えば薄幸なヒロインで最後は断崖に立っている(笑)方が多かったでしょうか。
クールさと清楚な可憐さとが同居している女優さんなので、そういう点では本作のミステリアスなヒロインが転じて最後は笑顔のハッピーエンドで終わる役柄は彼女にぴったりでした。欲を言えばせめて下着姿ぐらい見せて欲しかったですが^^;あと「和田ぎん」って名前(役名)は何とかならなかったのでしょうか。